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1998年6月4日、友人が亡くなった。
私も以前闘病生活を送った事があり、真夜中に一人病室の天井を眺めていた日々を経験している。 当時まだサラリーマン生活の中、突然の絶対安静。 これから先死んでしまうのか、あるいは社会復帰できるのか・・・、悩みあせるばかりだった。 お金さえ出せば何の病気でも治ると思っていたので、惜しみなく主治医が言う新薬も試してみた。 しかし1年が経過しても、結局治らなかった。 そしてもう現代医学には頼らなくなった。 そこから私の本当の治療が始まった。 「闘病」という闘いではなく、病とは何か、さらに人生とは何かに気づくためのプロセスの一つだと思う。 彼が再入院したと聞いた。 勿論、私には即「死」とは結びつかなかった。 それまで奥さんからは「毎日休みなく夜遅くまで働いている」と聞いていたので、 この入院は、ホテルにでもいるつもりでゆっくりくつろげれば、 彼にとって有効な時間になるのでは、と思っていた。 価値転換できる絶好のチャンスだと思っていた。 その価値転換のさまざまあるほんの一つのきっかけになれればという気持ちで 私は彼に絵を描いた。 彼の体力はすでに限界に来ているようだったが、 治癒をイメージする事なら出来るのではないか・・・。 数ヶ月後、彼は逝ってしまった。 絵なんて何の役にもたたなかったのかもしれない。 でも、意外な事に「絵画」も違う意味で少しは役に立つのではないか、 という事を、その後奥さんのある言葉で知った。 そしてその彼女の言葉は、彼女が私の作品を、”彼の入院していた病院のトイレに飾る絵として 病院に寄付する”という具体的な形なった。 その彼女の気持ち、病院の「トイレ」という場所に飾るという事に至ったプロセスを 綴った彼女自身のメッセージ「ほんのちょっとの安らぎを・・・」を是非読んでみて下さい。 世間では癒やしとかヒーリングとか流行っているようですが、 そんな大上段に構えず、ほんのちょっとの安らぎでいいのです。 今、彼女は深い悲しみから立ち上がろうと必死に努力している。 自分の足をしっかり大地のつけて、2人の子供と共に誰に頼る事なく生きようとしている。 このイベントが、彼女の心の整理の一プロセスになれればと思う。 世の中には、闘病中の人や、それを看病する人たちが沢山いる。 「そんな人たちに押しつけでない少しの安らぎを・・・」 という奥さんの気持ちを受けて描いたのがミラーシリーズです。 天国にいる彼と、奥さんの気持ちと、僕との『共同作業』だと思っています。 このミラーシリーズの絵は「今のあなたの心は何色ですか?」と問いかけています。 「心は何色か?」と言ってもピンと来ない方もいらっしゃると思いますが、 今の自分の心を映し出す鏡のような絵になってくれれば・・・ 今の自分の心を深く見つめるきっかけになってくれれば・・・ 私はこんなに嬉しい事はありません。 不安な日々、忙しい日々の中、もう一度自分の心を深く見つめる事によって 何かが変わる、という事もあると思うのです。 今、その境遇にいる方々、それを見守っておられる方々、どうか病と闘わないで下さい。 当事者にとっては不謹慎な言葉かもしれませんが、病気である事を楽しんで下さい。 私はそうして来ました。 そして今、自分の好きな事をやる事こそが人生であると思うようになりました。
1998年11月4日、山 内 孝 一
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